
企業のテレワーク導入に必要なこと。導入して分かった課題と、未来の働き方を考えた。
オウケイウェイヴは、2020年1月に虎ノ門へオフィスを移転。グループ会社を一箇所に集め連携力を高め、グループシナジーを高めたいという構想に向け、第一歩を踏み出しました。移転後はテレワークの導入が始まり、従業員にとっては働き方の選択肢が増えました。会社にとっては、テレワークをきっかけに自身の成長や業務の生産性、効率化の改善をはかってほしいという狙いもあります。
いち従業員にとっては、いつの間にか完了してた引越しと、いつの間にか整ってたテレワーク環境。その裏には準備に勤しんでくれた人たちがいます。テレワーク導入には、ツール面の整備の他、ルール制定や従業員への教育が必要です。詳しい準備の話や、従業員に求められることなどを聞きました。
マーケティング部デザイナーの佐藤です。社外・社内への情報発信のためのオウンドメディアチームの一員として、デザインの他、編集も担当しています。今日はよろしくお願いします。
テレワークはノートPCを配布しただけではできない!?従業員へのセキュリティ教育が必要。
まずは、テレワークの準備について教えてください!
テレワークの準備を始めたのは、3年くらい前からです。実は、当時は社員が使っていたアプリやメール、インフラの環境に、セキュリティ的な問題があるものや、リモートで社内に接続するためのインフラ環境がなく、「場所を選ばず仕事ができる環境」ではありませんでした。ただ、いつかはテレワークの必要性が出てくるし、さらには東京オリンピックに向けて、そのことを大前提としたインフラ改革を情報システム部門が始めたのがキッカケです。会社が「テレワークを開始するぞ!!」といつ言い始めてもいいように、先んじて環境を整えることから始めました。
(わ、長い...)
「全員にネット回線」をという課題もあって、年末にiPhoneを全員に支給し終わって、ようやく、全員テレワークできるよね、という条件が行き渡りました。
うーん、ノートPCあれば、すぐできると思ってました…。
そうですね。ノートPCがあれば、テレワークできるだろって思われるかもしれませんが、情報漏洩等のセキュリティ面や、社内のシステムを使う場合の仕組みなど、裏のIT環境を作らないといけないんです。
テレワークは、オフィスの外で働くことになるので、基本的に周囲には社員以外の人がいますよね。なので、そういった周囲の人たち、家庭や公共の環境で、簡単にPCの情報が見えたり盗まれたりしないためのルールも考えなければならない。
こういったことを作り込むのは、短期間だと難しくて。3年前から準備をしてましたが、まだまだ改善できる部分はありますね(笑)。ただ、会社のITインフラや投資できる予算の中で出来る最善のことを検討してきました。
去年の3月ごろ、オフィスの移転と共にテレワークも開始するというのが確定しましたが、そこから、今の状況を作り上げるのは、結構大変でした…。IT環境整備ももう一押し必要でしたし、何よりテレワークするためのルールや体制が全くの未着手で…。そんな環境だと、流石にテレワークはできないですよね。
...。
はい、出来ないと思います!
(ニッコリ)
オフィスにいれば、近くの人に聞いたらわかるけど、テレワークで自宅にいると、例えば、PC壊れた、紛失した、そういった時にどうすればいいの?など、細かくルールを決めとかないといけなくて。その辺を松村さんたちが決めて、社内周知を進めてくれました。それである程度みんなが一定の情報を得ることができる状態にできたかなあと。
↑テレワーク制度ルール早見表
なるほど…。
5年前から出ていたテレワークの話。コツコツ進めたペーパーレスが、テレワーク実現をリアルにした。
テレワークやりたい、という話は、5年くらい前から出ていたんですよ。
ああ、だいぶ前のキックオフ(年4回全社集会)で、話題にあがってましたね!会長(当時の社長)が「いつでも、どこでも、誰とでも働ける環境に!」と、スローガンのように発表されていたのは、よく覚えてます。
↑当時のキックオフ資料(17期4Q 2016年4月)
当時の僕らの体力では、資金も人材も潤沢で色々設備整えて、というのは、なかなか厳しくて…。それが、人が入って、リソースもできて、テレワークへ取り組むのが現実的になりました。あと、ペーパーレスを進めてきたのもテレワークにとっても大きいかなと。
ペーパーレス、でかいですね。
1枚の紙を印刷してFAXで送るためだけに出社、とかもったいないですからね。
2018年夏から取り組んだペーパーレス。着手前から70%削減を達成。目標は83%。
ペーパーレスの話、もっと聞きたいです。いつごろから取り組んでましたか?
2018年8月からです。最初は調査から始めました。具体的には、年間の費用算出(カウンター料金、枚数、紙代、保存する場所の家賃)、誰が何枚出力しているか把握、6ヶ月以内に20枚以上出力している全員に何のために出力したかヒアリング、です。
↑複合機利用調査の資料
あ、それ覚えてます!私の周りにも何人かヒアリングされてる人いました。
次は事例作りです。比較的取り組みやすいとこからペーパーレスを始めて、成功事例を作ることを始めました。例えば、取締役会の資料や給与明細、年末調整のペーパーレス化です。
年末調整のペーパーレスは、すごいいいですよね!楽!給与明細も。私、給与明細、毎回、ビリビリって紙を破いて、中を見る、ていう作業が本当に面倒だったんです。今は、メールがきて、PC上で確認できるっていうのは、とてもありがたいです!
次のステップでは、請求書や評価関連書類など、法律的な要件や社内のルール変更が必要なものを対象に進めました。さらに社外向けの資料など、外のお客さまから理解、協力が必要なものへ取り組みを進めていきたいと考えてます。
テレワーク推奨で出社率60%を想定。新しくABWスタイルを導入して、従業員が働く場所を選べる自由を提供したつもりが…。
オフィス移転後の初の出社日の1月6日、思っていたのと違うなってとこありました?
それだらけですよ…。
はは!
移転後は、テレワークを推進して、出社率60%くらいに抑えたいと考えてました。ですが…。
ふふ(笑)。みんなフルマックスに出社しちゃってましたね。私もですけど(笑)。
はい…。新オフィスでは、工事が全て完了し家具の搬入が終わればワークポイントとしては十分な数を揃える予定でしたが...
ん?
ん?
ワー、ワーク??
ワークポイント。座席ですね。残念ながら移転初日にそれらを揃えることが出来ませんでした。。。そうすると、想定通りではなくて…。床に座らざるを得ない人も出てしまいました…。。
あ、いたいた!ダンボールで席作り出す人とかも。巣作りみたいでしたね!
(苦笑)
まだテレワークに慣れてなかったから、最初は出社しないことに不安がありましたよね。情報が回ってこないんじゃないか、とか、テレビ会議ちゃんとできるのかな、とか。
今なら、Teams(※1)でテレビ会議を問題なくできるし、情報もTeams上で全従業員に共有されるので、全く心配ないっていうのは分かるんですが。
そうですね。
混雑の原因は、何が考えられますか?
前述の通りオフィス内の一部の工事が終わってなかったことにあると思います。そこの工事が終わってないから、100%の出社ではあるものの、150%分くらいの感じになって、かつ、家具もまだ入ってない、引越しの荷物もいたるとこに置いてある。それを考えると200%。ラッシュの電車と同じくらいな感じ。
ワーストワンの東西線(※2)レベル(笑)。
ふふ(苦笑)。
※1 Microsoft Teamsのこと。Microsoft提供のグループウェアで、オウケイウェイヴでは、テレワーク導入のために、1年近く前に取り入れた。
※2東西線…東京で通勤ラッシュの混雑ランキング1位の路線。
一旦完成していたレイアウト図面が、全て白紙に…。
移転の時に、全て整った状態でみなさんを迎え入れたかったと思うんです。家具もそろってる、工事も全て完了してる、みたいな。準備の段階で想定外なこと、何かありました?
うーん…。去年の7月に移転場所が決まって、実は、その時点ですでにレイアウト図面は出来上がっていました。ですが、色々な事情で図面を全て白紙に戻すことになりました…。
そこから、新たに、ABW(※)を導入したり、セキュリティや消防、防災などの条件をクリアしていかなければならず、ここで、かなり時間を使ってしまいました。結局は合計3、4ヶ月は作業時間がなくなりました…。
本来は、移転の工事をするのは10月1日だったんですが、実際工事が始まったのが、12月半ば。どんどんスケジュールがずれ込みました。
(年明けから新オフィスへ出社なのに、12月半ばに工事開始って…。)
工事のスケジュールがずれ込んだのって、松村さん西川さんの作業に影響したことありますか?
テレワークのルールを作る時間が短期間になってしまったことかな。事前に準備はしていたものの、検討時間が短くなりました。特に従業員への教育の部分。もう少しわかりやすく意図を伝えられたら、ひょっとしたら、年初の大混雑も緩和されたかもしれない。そういうところでは影響はありましたね。
※ ABW:Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の略。仕事内容に応じて、自由に働く場所を選択できるワークスタイルのこと。オウケイウェイヴでは、ひとりで集中したいときに篭れる巣のような席や、人と話しながら作業ができるファミレス席、オープンなカフェ風なエリアなどを用意。
そんな中、新型コロナウィルス感染拡大に備えたフルリモートワークが始まり、パケ死(※)する人が続出。
オウケイウェイヴでは、2月19日から、新型コロナウイルス感染拡大に備えて原則出社停止、在宅勤務が実施されましたよね。パケット問題が出たと思いますが。
通信量は、20GBで余裕だなと思ったけど、実際は、月半ばで超えてしまう人が多々います。なので今は、50GBに変えてます。
元々は東京オリンピックに合わせて、最適化を図る予定でしたが、半年早まってしまったので…。本当は、今の時期に、みんなの通信容量をチェックしながらプランを変えたかったけど、当時は急激に対応しないとならなくて。
当初テレワークは、チームごとに月に回数制限を設けて、徐々に増やしていく予定でした。その期間で通信容量の調査をして、最適解を見つけたかったんだけど、一斉に全社員がテレワークを始めたので、月の通信容量上限を超えてしまう人が続出しました…。
ふは!パケ死!
わたしも通信容量オーバーでTeamsさえも立ち上がらないから、情報システム部門の人たちに連絡すらできないってことありました。
今では、皆さんが普段の業務でどれくらい通信量を使うか把握できたので、それに応じたプランを設定してます。なので、通信容量オーバーはもう起こらないかと!
とはいえ、それでも当社のテレワークへの切り替えはスムーズにできたと思います。セキュリティ面でも導入ツール面においても、「テレワークするぞ!」と決まってから大きな変更の必要もなく、本当にスムーズでした。
情報システム部門の方に聞くと、同じツールを使っている他社の方に「え?そんなセキュアな設定があるんですか!!」と驚かれたこともあるそうです(笑)。
※ パケ死…通信容量をオーバーし、通信速度が遅くなること
在宅勤務での課題。個人の自宅の環境に対して、会社がしてあげられることは少ない。
あとは、どうしても印刷せざるを得ない、コンビニプリントしていい? とか、家のプリンタ使ってもいい? といった問い合わせがあります。
ペーパーレスは進めていたものの、お客様の事情やご都合もあるので。
みんなが自宅で仕事する環境を作ることができているかどうかもありますね。
会社として、してあげられること、してあげられないことがあるので、難しい問題です…。
希望者にモニタを配布したり、会社としてできることは対応してますね。ですが、子供の環境や、部屋の問題など、その辺は厳しいですね。
↑佐藤のテレワーク環境。
モニタは置く場所がないので、希望しませんでした...!
会社としては、5月からテレワーク手当(全員一律毎月5,000円)を新設しました。
テレワークメインになったから、都内から引越しを考えてるって人の話、聞きますね。通勤の必要ないから、都内から離れて、もっと広い家に住もうって。
聞きますね、そういう話。私としても、みなさんには通勤に縛られて生活の選択肢を狭めてほしくないと思ってます。例えば、首都圏から離れた自然豊かな場所に住む、実家のご両親の近くに住む、なんて選択肢をみなさんに持ってもらえるように、制度を整えていきたいです。
私も広い家買っちゃおうかな♪
買えばいいんじゃないですか?
シャドーIT問題。みんなが良かれと思って取り入れたツールがセキュリティ面でのリスクに…。
例えば、今の状況になって、Zoomをみんな使い始めましたが、Zoomってセキュリティ面で問題はないの?というのがあります。こういう状況に急になったから、新しいツールを使い効率的に業務を進めていけるようにすることは大事。しかし、セキュリティ面やIT環境の整備は考えないといけないです。
Zoomは、アプリに脆弱性があったり、色々問題ありましたね。
Zoomはわかりやすい代表例ですね。みんなが、この状況のなかで、全てが整った万全な状態で迎えたわけではないから、良かれと思って工夫をしようとして、じゃあZoomってのがあるねってなって。もしかしたら、会社の目が行き届かないとこで、良かれと思って自分で何か工夫してる可能性がありますよね。
佐藤さん...
はい...。
その通り。
(ホッ...)
会社が把握してないITのサービスのことを「シャドーIT」って言うのですが。それってみんな良かれと思って、悪意がなくて。見つけるのが難しい。その辺の対応は大変ですね。
教育と啓蒙を、とにかくし続けるしかないですよね!
はい。皆さんの働きやすさ、効率を優先したいので、事前に声をかけてもらえればと思います。
ですね。みんなが使いたいものは使ってもらいたし、こっちとしても把握しておきたいので、気軽に相談して欲しいです。
これからオウケイウェイヴのテレワークはどうなる?
フェーズ2に、カフェを解禁したいなあと思ってます。
(※セキュリティ面で整備しきれなかった部分があり、テレワーク導入のフェーズ1では自宅とサテライトオフィスのみ解禁したため。)
カフェいいですね!カフェの要望は高いんじゃないですか?
多分高いですよ。僕もカフェはあるなって考えてたけど、今の状態だと、セキュリティ面でもう一段階の強化や、社員に貸与する備品が行き届いていないといった面もあるので。
カフェ解禁のためには?
必要なツールを揃える、もあるし、みんなの意識の問題もあります。例をあげると、プライバシーフィルターはある人とない人がいますね。あとは、プライバシーフィルターがあっても、覗き見を意識していたり、機密性の高い作業の場合は場所を変えるといった、テレワークならではの行動意識を持ってもらうといったところです。
実家とか旅行先、キャンプ場も解禁できるといいですね(笑)。
旅行先で、とくに海外で仕事できたら、いいですね!
リフレッシュも兼ねて、ワークライフバランス的にありだと僕は思います。効率的にもなるでしょうしね。でも今はできないので、フェーズ2で、ここまでは解放しようか、とできれば良いなと考えてます。
ありがとうございました!!
インタビューを終えて
オウケイウェイヴでは、2月19日と割と早い段階で原則在宅勤務に切り替わりました。スムーズに切り替えができたのは、みなさんの事前の準備のおかげ。限られた時間の中、ありがとうございます!
実際にテレワークをしてみると、従業員側の人も今までと変わらないといけないことがたくさん。1日の時間の使い方は自分自身で管理しないといけないし、オフィスで自然にできてた仕事モードへの気持ちの切り替えや、自宅での集中できる環境づくりなど、オフィスで仕事する環境とはだいぶ違います。オフィス以上に効率化できないと、テレワークしてる意味ないねってなっちゃうので、その辺は頑張りたいとこですね。
そして、このままテレワークが定着して、例えば住む場所の選択肢が広がることはすごい楽しみです!広い家住みたいなあ…。
執筆:佐藤